科 目 | ディジタル信号処理 ( Digital Signal Processing ) | |||
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担当教員 | 小矢 美晴 教授 | |||
対象学年等 | 電気電子工学専攻・1年・前期・選択・2単位【講義】 | |||
学習・教育 目標 |
A1(40%), A4-AE4(60%) | |||
授業の概要 と方針 |
ディジタル信号処理は,現代のIT社会を支えるきわめて重要な基盤技術である.本科目では離散時間信号の考え方,z変換,離散フーリエ変換,ディジタルフィルタなどディジタル信号処理の基礎的な考え方を理解させる. | |||
到 達 目 標 |
1 | 【A1】 離散時間信号,インパルス応答,たたみこみ,標本化定理などの基本的事項が理解できている. | 2 | 【A1】 フーリエ変換,フーリエ級数,ラプラス変換,z変換の意味と用途が理解できている. | 3 | 【A4-AE4】 高速フーリエ変換の理論と意義が理解できている. | 4 | 【A4-AE4】 z変換を用いて離散時間システムの安定性の判別や周波数応答の導出ができる. | 5 | 【A4-AE4】 IIRディジタルフィルタ,FIRディジタルフィルタの基本的な設計手法が理解できている. | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
評 価 方 法 と 基 準 |
到 達 目 標 毎 |
1 | 基本的事項が理解できていることを中間試験で評価する. | |
2 | フーリエ変換,フーリエ級数,ラプラス変換,z変換の意味と用途が理解できていることをレポート及び中間試験で評価する. | |||
3 | 高速フーリエ変換の理論と意義が理解できていることをレポートと中間試験で評価する. | |||
4 | z変換を用いて離散時間システムの安定性の判別や周波数応答の導出ができることを定期試験で評価する. | |||
5 | IIRディジタルフィルタ,FIRディジタルフィルタの基本的な設計手法が理解できていることをレポートと定期試験で評価する. | |||
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総 合 評 価 |
成績は,試験70% レポート30% として評価する.なお,試験成績は中間試験と定期試験の平均とする.100点満点で60点以上を合格とする. | |||
テキスト | ノート講義(必要に応じてプリントを配布する) | |||
参考書 | 「ディジタル信号処理(上)」Oppenheim,伊達玄(コロナ社) 「ディジタル信号処理(下)」Oppenheim,伊達玄(コロナ社) |
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関連科目 | E3「電気数学II」,D3「電気数学」,E4「応用数学」,D4「応用数学I」,E4「制御工学」,D4「制御工学I」,D5「画像処理」「制御工学II」 | |||
履修上の 注意事項 |
応用数学の内容を修得していることを前提とする. |
週 | 上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など) |
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1 | ディジタル信号処理の意義と概要 |
従来,アナログ信号はアナログ回路でアナログ的に,ディジタル信号はディジタル回路でディジタル的に処理されることが多かった.ディジタル信号処理はアナログ信号をディジタル的に処理する技術である.ディジタル信号処理にはさまざまな利点がある. | |
2 | 離散時間信号とシステム,標本化定理 |
線形でシフト不変なシステムを考えることにする.この場合,システムの出力は,そのシステムのインパルス応答とそのシステムへの入力のたたみ込み和となる.時間域で標本化された信号から元の信号を復元するためには元の信号に含まれる最大周波数の2倍以上の周波数で標本化しなければならない.これを標本化定理と呼ぶ. | |
3 | 離散時間システムと信号の周波数領域での表現 |
システムの周波数特性はインパルス応答をフーリエ変換することにより求めることができる. | |
4 | 正規直交基底 |
正規直交基底とは,大きさが1であり,互いに直交するベクトルの集まりを指す.また,正規直交基底を用いることで,関数近似を行うことができる. | |
5 | 連続時間信号のフーリエ解析,フーリエ級数による関数近似,周期的な数列の表現(離散フーリエ級数) |
周期的な連続時間信号のフーリエ表現はフーリエ級数と呼ばれる.サンプリングされた信号は,フーリエ変換した三角関数を無限個加算したもので表現することができる.周期的な離散時間信号のフーリエ表現は離散フーリエ級数(DFS)と呼ばれ,DFSの1周期にだけ着目すると離散フーリエ変換(DFT)が得られる. | |
6 | ルジャンドル多項式による関数近似 |
サンプリングされた信号は,べき乗項を無限個加算したもので表現することができる. | |
7 | 高速フーリエ変換 |
DFTはサンプル数Nの2乗のオーダーの計算量が必要である.しかし,係数行列の規則性をうまく利用することによりこれをNlogNのオーダーに削減することができる.これを高速フーリエ変換(FFT)と呼ぶ. | |
8 | 中間試験 |
1週目〜7週目の内容について中間試験を実施する. | |
9 | 中間試験の返却及びz変換,z変換の収束と物理的実現性と逆z変換 |
中間試験の解説を行う.連続時間信号に対するフーリエ変換の全複素平面への拡張がラプラス変換であるのに対し,離散時間信号に対するフーリエ変換の全複素平面への拡張がz変換である.また,z変換を離散時間信号に変換する逆z変換がある. | |
10 | システム関数 |
インパルス応答のz変換をシステム関数または伝達関数と呼ぶ.システム関数とそのシステムの周波数特性,安定性,回路方程式等には密接な関係がある. | |
11 | ディジタルフィルタ,アナログフィルタ概論 |
ディジタルフィルタはIIRフィルタとFIRフィルタに大別される.また,代表的なアナログフィルタにはバタワースフィルタ,チェビシェフフィルタ,楕円フィルタがある. | |
12 | IIRディジタルフィルタの設計 |
IIRディジタルフィルタの代表的な設計法にはインパルス不変変換,双一次変換がある. | |
13 | 直線位相特性 |
フィルタの設計をする際に,直性位相特性が必要となる.IIRのフィルタではこの特性が困難であるが,FIRのフィルタでは直線位相特性が実現できる. | |
14 | FIRディジタルフィルタの設計 |
FIRディジタルフィルタの代表的な設計法には時間窓を用いる方法,周波数サンプリング法がある. | |
15 | 窓関数 |
窓関数として用いられる代表的な窓に方形窓,バートレット窓,ハニング窓,ハミング窓,ブラックマン窓がある. | |
備 考 |
前期中間試験および前期定期試験を実施する. 本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の事前・事後自己学習が必要である.事前学習では,次回の授業範囲について,関連する教科(応用数学や制御工学)のテキストを見直し,各自で基礎的な知識を確認しておくこと.また,事後学習では,授業で行った内容をシミュレーション波形を用いて確認するとともに,出された課題に対して,指定期日までにレポート提出を行うこと. |